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釧路地方裁判所 昭和57年(わ)46号 判決 1982年5月13日

本籍

北海道北見市北四条西二丁目五番地

住居

同市美芳町三丁目二番二〇号

歯科医

大島一郎

大正九年二月二五日生

所得税法違反事件

検察官杉山茂久出席

主文

被告人を懲役一年及び罰金二、二〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、北見市北四条西二丁目五番一号において歯科医を経営しているものであるが、所得税を免れようと企て、自由診療収入の一部及び預金利息収入を除外するなど不正な方法によってその所得を秘匿したうえ

第一  昭和五三年分の所得金額が八四、〇七二、七八八円で、これに対する所得税額が三八、二〇一、六〇〇円であるにもかかわらず、昭和五四年三月六日北見市青葉町一三番地所在の所轄北見税務署において、同税務署長に対し、所得金額は二六、四一三、七二八円で、これに対する所得税額は九、〇六八、六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額と右申告税額との差額二九、一三三、〇〇〇円を免れ

第二  昭和五四年分の所得金額が八〇、六九六、九一五円で、これに対する所得税額が三八、五〇四、六〇〇円であるにもかかわらず、昭和五五年三月一二日前記北見税務署において、同税務署長に対し、所得金額は四一、五三九、一四五円で、これに対する所得税額は一七、五八〇、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同年分の正規の所得税額と右申告税額との差額二〇、九二四、六〇〇円を免れ

第三  昭和五五年分の所得金額が九九、二〇八、九九二円で、これに対する所得税額が四八、三九九、二〇〇円であるにもかかわらず、昭和五六年三月一〇日前記北見税務署において、同税務署長に対し、所得金額は三七、四四二、〇九五円で、これに対する所得税額は一五、二五七、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同年分の正規の所得税額と右申告税額との差額三三、一四二、〇〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

判示各事実(なお、特に、限定したものを除き、判示全部の事実につき)は、

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  被告人作成の上申書及び答申書(二通)

一  大島アイの検察官に対する供述調書

一  丸子茂則(二通)、斉藤克博(二通、判示第一、節二の事実関係)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  西川光秋、金谷徹志(二通)、本村一行(判示第三の事実関係)、大島アイ、小原敏、髙橋實作成の各答申書

一  小原敏作成の回答書

一  大蔵事務官坂本学、同小山準一共同作成の調査事績報告書

一  大蔵事務官山本祐司(五通)、同坂本学、同藤田誠(三通)、(昭和五六年一一月一〇日付、同月一九日付、同月二〇日付<判示第二の事実関係>)、各作成の各調査事績報告書

一  森マチ子、勝山雅則(判示第三の事実関係)、坂野ユウ子(前同)、長岡たつ子(前同)、谷川清明(前同)、木村猛、目黒京子各作成の取引内容照会に対する各回答書

一  北見税務事務所長作成の納付状況照会に対する回答書

一  北見市長作成の大島一郎、アイにかかる市道民税及び固定資産税の課税状況についての回答書

一  北見労働基準監督署長作成の労働保険納付状況照会回答書

一  髙橋甫(二通)、出村秀夫、小林耕三各作成の各証明書

一  検察事務官作成の昭和五七年二月二二日付(判示第一、第二の事実関係)、同月二三日付(同第三の事実関係)、同年三月一日付(四通)各報告書

一  検察官作成の電話聴取書二通(後綴分は判示第三の事実関係)

一  検察事務官作成の電話聴取書(判示第一の事実関係)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書三通(前綴分は判示第一の、中綴分は同第二の、後綴分は同第三の各事実関係)

一  押収にかかる収入金額等明細書綴一綴(昭和五七年押第二八号の1)、建物賃貸借契約書二通(同号の2、3)、公正証書一通(同号の4)、建物登記済権利証一通(同号の5)、源泉徴収簿一冊(同号の6、判示第一の事実関係)、所得税確定申告書等綴一綴(同号の7)

を総合してこれを認める。

(法令の適用)

判示各所為

行為時においては昭和五六年法律第五四号による改正前の所得税法二三八条一、二項に、裁判時においては同法律による改正後の所得税法二三八条一、二項に各該当(刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑を適用)

刑種

懲役刑と罰金刑を併科

併合罪の処理

刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条により犯情最も重い判示第三の罪の刑に法定加重、罰金刑につき同法四八条二項

労役場留置

刑法一八条

執行猶予

懲役刑につき刑法二五条一項

訴訟費用

刑訴法一八一条一項本文

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 中野保昭)

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